総計4,644帖にのぼる経典群
「一切経」とは、仏の教えを説いた「経」、僧侶の守る決まりを示した「律」、仏教の教義を論じた「論」の「三蔵」を主体とした仏教関係書籍のコレクションです。仏教の伝わった国々では、古くからこの一切経を寺院の経蔵にそなえ信仰の対象や研学の糧としました。石山寺には奈良時代から江戸時代までに書写された4,644帖にのぼる経典群を所蔵しており、それらは「石山寺一切経」と呼ばれています。
「石山寺一切経」のうち、奈良時代のものが310点、平安末期のものが約3,000点、室町時代のものが約600点、その他は平安初期か鎌倉時代のものとして、重要文化財に指定されています。奥書によると、平安末期の約3,000点は沙門念西の努力によるものであり、室町時代のものは善忍律師の勧進によって集められたものであることがわかっています。また、正倉院文書によると、天平宝字5年(761)の暮れから翌年の夏にかけて、石山院の堂塔伽藍26棟が造営された時、その一つとして間口約9m、奥行き約3.7mの経蔵が建てられ、同時に設けられた写経所で600巻の大般若経が書写奉納されたことがわかります。
「石山寺一切経」が完全な姿を保っているのは、江戸時代の学僧尊賢僧正が中心となって整備に尽力されたほか、歴代の僧侶たちによる護持の努力のおかげといえます。