十善戒は生きるための指針
日本では大乗仏教が広く信仰されていますから
一人のさとりではなく、大勢の人と一緒にさとりを目指していくことを目指します。
大乗仏教より以前の仏教は小乗と呼ばれ、具体的には上座部仏教や部派仏教と呼ばれており
あくまでも個人のさとりを目指していた、といわれています。
今も海外では上座部の修行をする人が少なくありません。
大乗仏教と小乗で大きく異なるのが、修行の実践方法です。
小乗は出家者と在家(出家していない人)を明確に分け、
出家者が修行をすることによってのみさとりに至ると考えるのに対し、
大乗では出家者だけでなく在家の人でもさとりに至ることができると考えます。
ということは、大乗では在家の人も修行ができるということになります。
その修行法というのも特別なものでなく、
有名な「六波羅蜜」に代表されるように、日常のなかで行うことができるものが多いのです。
その最たるものは、「十善戒」だと思います。
十善戒とは、
①不殺生 殺さない、むやみに生き物を傷つけない
②不偸盗 盗まない
③不邪淫 男女の道を誤らない
④不妄語 嘘をつかない
⑤不綺語 無意味な議論をしない
⑥不悪口 乱暴な言葉を使わない
⑦不両舌 友人を仲違いさせるようなことを言わない
⑧不慳貪 貪らない
⑨不瞋恚 怒らない
⑩不邪見 偏ったものの見方をしない
以上の十の決まりごとを日々の生活のなかで守るということです。
「戒律」と聞くと厳しいイメージを持たれる方もいらっしゃると思います。
○○してはいけない、という決まりごとであり、
そしてそれを破ったときには罰則がある、など。
実は、戒律といってももともと「戒」と「律」は別もので、
「律」が集団生活を送るために守るべき行動の規範で、
罰則があるのに対し、
「戒」とは、自らの心を修めるための行動の指針です。
戒を完璧に守れなくとも罰則はありません。
これを守ると心が軽くなります。
戒を守ることによって、自分自身が戒によって守られます。
正式には授戒が必要になりますが、
日々この行動を意識していると、自然と本来のきれいな心を実感するようになります。
また詳しく書きたいと思いますが、①から⑩までのことを少しずつやってみるだけで
自分になかにある、本来清らかな仏さまの心が目覚めるようになっていきます。
ぜひ日々、お心に留めてみてください。